「ごめんなさい兄さん…。立ち聞きして…」

 「かまわないよ。リナリーにも言おうと思っていたから」


 「…なんなんだよ。闇の二年って…」

 「僕も気になります」


 「それは………」

 「それは僕が今から話そうと思っていたことだよ」
















  













 「闇の二年っていうのはね、殺戮の一年と沈黙の一年をまとめたものなんだ」

 「何なんですかですか?その、殺戮と沈黙って…」

 「簡単に言えばちゃんが一番荒れていた時期。
 その時期が大体4・5年前なんだ。
 その頃までの記憶だってわかったのは、
 ちゃんが帰ってきたときの第一声。」



 (『おい!クソ眼鏡!!一体どうなっている!
  このガキ共はなぜ私のことを知っているんだ!?』)



 「僕のことクソ眼鏡なんて言っていた時期は、あの時しかないからね…」


 コムイは、辛そうな、そしてどこか懐かしそうな言い方で言う


 「そういえばコムイさん、あの時…」



 (『お、落ち着いてくん。  話は一通り彼等から聞いたから、とりあえず検査ね』)



 「くんって…」

 「あの呼び方でないと怒られちゃうからね;;
 咄嗟に呼べてホントよかったよ」


 苦笑いで言うコムイ





 「あの頃の事…、あまり…思い出したくないわね…。」


 リナリーが悲しそうに呟いた…


 「…4・5年前………確か、エクソシストの攻撃に
 ファインダーが巻き込まれて死んだり
 大怪我負ったりって事件が何度かあったことは聞いたことがあるが…」

 「それは表向きの情報だよ。本当は巻き込まれたんじゃなくて、
 彼女が気に入らなかったファインダーや他の人達に
 怪我させたり殺したりしていたんだ…」

 「…!?」

 「な…なんでですか!?さん、エクソシストですよ!」


 「ちゃんが一番荒れてた時期だから…。
 神田くんなら、なんとなく想像はつくよね?」


 神田は一瞬目を閉じてから


 「あぁ。一番荒れてたんなら、この教団が残ってること自体が奇跡だと思うぜ」


 静かに思ったことを述べた


 「そうなる前に対処はとったからね」


 「教団が…?僕には全く理解できません…」


 アレンは話についていけず、混乱していた


 「アレン君はまだことよく知らないもの。無理もないわ」




 「そして、そんなことが一年続いたから、殺戮の一年。
 沈黙の一年は、これ以上は危険だと思った僕が、
 ちゃんを部屋に閉じ込めて、頭を冷やさせた時期」

 「教団にとっては闇の年、にとっては闇の二年ってことか」

 「そうだね」


 「もいろいろあったから、辛かったんだと思うの…
 それが押さえられなかっただけなのよ…きっと」




 アレンは混乱している頭で必死に考え、気付いた


 「…じゃあ、大変な事って言うのは…」

 「そう。このままだとちゃんがまた、闇の時間を過ごす事になるんだ。」

 「そんなのダメです!絶対!!何とかならないんですか?」

 「また、部屋に閉じ込めるしかないよ…」

 「閉じ込めるって…どうすんだよ」


 心配そうに神田が聞く


 「そんなに心配しなくていいよ。神田くん。別に監禁とかそういうのじゃないから。
 恐らく、君に任務は回さないってキツく言えば、ちゃんはずっと部屋にいてくれるから」

 「……そうか」





 「そういえば、はいま何処にいるの?兄さん」

 「ちゃんなら、今病室で眠ってるよ。
 放っておくと危ないと思って、ちゃんに気付かれないように睡眠薬を飲ませたから」


 「そっか」

 「とりあえず、今言わなきゃと思ってたことは全部言ったから、
 部屋に戻っていいよ。…あ!まだ、一つ忠告しておく」

 「……」

 「何ですか?」

 「二人ともちゃんには絶対近づかないでね」

 「「!?」」

 「ちゃんは君たちの事を覚えていない。
 会いに行っても怪我するのが落ちだ。
 それでも会いたいというのなら、」


 コムイは神田を見る


 「たった一度だけなら、許可する。
 でも危ないと思ったらすぐ逃げるように!」

 「……わかった」

 「…わかりました」

 「顔を見るだけでいいのなら、
 リナリーか僕が食事を持っていく時に一緒にいていいけど、
 その時は、必ず僕たちの指示をしっかり聞いて。いいね?」

 「はい」

 「あぁ」

 「じゃあ二人ともしっかり休んでね。そうとう疲れてるだろうし」

 「……」

 「はい、それじゃ、失礼しました」


 二人は自室へと戻っていった
















 



07/07/19