―翌日


 は病室から自室へと戻った。
 コムイに任務は回さないと直接言われても、
 文句一つ言わず自室にこもっていた。


 「任務は回さないか…。そのほうが嬉しい。

 それよりも…

 何なんだ…この変な感じ…

 忘れてはいけないものを忘れたような…変な感覚…」














  













 「あ、リナリー」

 「!アレン君」


 アレンは前方に食事を運ぶリナリーを見つけ声をかけた
 

 「それ、さんの食事ですか?」

 「うん。そうよ」

 「……」


 アレンは食事を無言で見つめる


 「ダメよ!これはのだからアレン君にはあげない」

 「ぇ…ぁ…いや、そんなつもりは…」

 「フフ。冗談よ!が心配なんでしょ?」

 「………は、はい」


 アレンは呟くように返事をした


 「そんな思いつめたオーラ出さないでよアレン君。
 この教団内には、私達以上に責任感と
 不安な気持ちでいっぱいの人がいるんだから」


 リナリーは少し苦い顔をして言った


 「…神田…ですか?」

 「そうよ。だからアレン君がそんなんじゃダメ。
 神田を元気付けることは出来ないけど、サポートはしてあげなきゃ」

 「はは、あまり気が乗りませんね」

 「言うと思った。じゃあ私行くから」


 そう言ってリナリーは歩き出した


 「あ、…リナリー!」

 「…何?」

 「付いて行って、いいですか?」

 「……」


 アレンの問いかけに少し黙るリナリー


 「ダメ…ですよね。やっぱり」

 「いいけど、…本当に顔見るだけよ…」

 「!…はい」

 「じゃあ付いて来て」


 二人はの部屋へ向かった







+++




 コンコン


 リナリーがの部屋の戸をノックした


 「、食事よ。入るわね」


 そう言いの返事も待たずに戸を開け入った


 「アレン君は私の後ろにいてね」

 「はい」


 アレンも一緒に入る。

 はベッドにあぐらをかいて座っていた


 「……」

 「ここに置いておくわね」

 「……」

 「一時間後に取りに来るから」

 「……」


 リナリーの言葉を聞いているのかいないのか、
 は窓の外を見ていた


 「じゃあアレン君、出るわよ」

 「ぇ。ぁ、はい」


 二人が部屋を出ようとした時


 「クソガキ」

 「「!?」」


 が喋った

 二人が黙って立っていると、


 「そこの白髪頭のことだ」


 そう言い窓の外から目を離しアレンの方を向いた


 「…アレン君…」


 リナリーが心配そうにアレンを見た


 「大丈夫ですよリナリー」


 アレンがリナリーにそう言うと


 「はい。何ですか?」


 静かにに歩み寄り返事をした


 「……。貴様、…名は?」


 「ぇ!?」


 そう問うたに、リナリーが少し驚いた
 アレンはリナリーの反応には気付かず、答える


 「アレン・ウォーカーです」

 「…アレン・ウォーカー…」


 がアレンを見て呟く


 「…何か、思い出しましたか?」


 アレンはそんなの行動が気になり聞いてみた


 「ただ聞いただけだ。別に何も思い出さんし
 思い出す気もない。私はこのままでいい。」

 「!?何言ってるんですか!!さん!」

 「!」


 の言葉にアレンが食いついた


 「ダメよアレン君!もう戻りましょう!」


 リナリーの言葉はアレンに届かず、


 「さんはただの記憶喪失じゃないんです!
 さんが思い出そうとしなければ、
 本当に僕たちとの想い出が消えてしまいます!
 僕はそんなの嫌です!!」


 「アレン君……」


 アレンはに訴える


 「貴様が嫌だろうが私には関係ない」

 「最悪僕はそれでもいい。まだ会ったばかりで大した思いでもないから。
 でも!神田は、神田はそうじゃない!今だって多分苦しんでる!
 僕は神田好きじゃないですけど、神田が苦しむ姿は見たくない!」

 「アレン君!!」

 「!?」


 ようやくアレンにリナリーの声が届いた


 「……神田…(黒髪か…あいつは…何かひっかかる
 …くそ…考えるだけで頭が…)」



 が突然左手で頭を抑えた


 「……。ぁ…すみません…僕…」

 「…出て行け…」

 「ぇ…」

 「今すぐ部屋から出て行け!二人まとめて消すぞ!」


 あいてる右手に武器を構え叫ぶ


 「……;;」


 アレンが殺気に満ちたに怯んでいると、


 「行くわよ!アレン君!」


 リナリーがアレンを引っ張り部屋から出て行った




 「なんなんだ…いったい…。この気持ち悪いくらいの感覚…
 記憶の空間…なのか…。だとしたら、ここに埋まるのは、
 あの黒髪、なのか…?わからん!わからん!!」



 はリナリーの持ってきた食事には手を付けず、
 布団に包まり、一度寝ようと必死に寝る事だけを考えた














 



07/08/11