チュンチュンチュン


 窓から日の光が刺し、鳥のさえずりが聞こえる

 チュンチュン


 「…ん……」


 さえずりが神田にも聞こえたのか、
 神田はゆっくり目を開けた


 「起きたか?」

 「………朝?」


 神田は窓の外を見て呟いた














  













 「大丈夫か?」

 「……………!?お前、記憶は?」


 昨日と同じ態勢でベッドに座っていたを視界に捕らえ、
 起き上がりながら聞いた。


 「………」


 帰ってきたのは無言の返事…


 「そうか……」

 「でももうお前を殺す気は起こらん」

 「…!」

 「私にしては珍しく、もともとそんな気もなかった。
 お前を見てると殺意が消えるから」

 「じゃあ、なんで昨日は…」

 「怖いから。自分がおかしくなりそうで怖くなったから、
 だからお前が消えれば怖くなくなると思った。
 殺意がなくとも人は殺せるしな」

 「……」


 「お前、神田って言ったな」

 「!…あぁ」

 「すまなかった」

 「!!?」


 の一言に神田は目を見開き驚いた


 「…何だ」

 「お前の性格だと絶対謝るような奴じゃないと思っていた…」

 「そういえば、久しぶりだな…謝罪の言葉なんて口にしたの…」


 「でも、俺の知ってるお前はよく謝る奴だったぜ」

 「…!」

 「お前は、仲間想いで良い奴だった。まだ人は苦手だったけどな」

 「お前、自分のことは自分で思い出せと言っておきながら…」

 「俺が言ったのは俺のことだけだ。別に全部黙秘するつもりもない」

 「変な奴だ…」

 「フ。何とでも言え」


 「ついでにお前の体も変だな」

 「?」

 「気持ち悪いくらい回復が早い」

 「ああ…もともとそういう体だ」

 「まあおかげでクソ眼鏡にはバレんな。
 さすがにエクソシスト殺りかけたっていうのはヤバい」

 「ファインダー無駄に殺すのはヤバくないのか?」

 「あんなの、代わりはいくらでもいる」

 「まあ確かにな」


 神田はゆっくり立ち上がった


 「腹減ったから戻る」


 神田はドアの方まで歩いた


 「神田」

 「!?………何だ?」


 記憶を失くしてから初めて呼ぶために使ってくれた自分の名。
 いつも呼ばれていたはずなのに、驚きと嬉しさとがいっきに込み上げてきた。
 が、そんなの表に出せないので必死に抑えてを見る


 「飯、持って来い」

 「…は?」


 思ってもいなかったことを命令形で言われ、
 さっきの気持ちは一瞬にどこかへ消え去った…が、


 「お前の分も持って来ていい」

 「……!?」


 つまりは一緒に飯を食おうと言う誘いに、
 消え去ったはずの気持ちが倍になって戻ってきた


 「…何ニヤけている?気持ち悪い…」

 「!ぁ…悪い……」


 表情が抑えられなかったのか、どうやらニヤけていたらしい。
 神田はそっぽを向いて謝った


 「いいから早くしろ。昨日は晩飯食ってないんだ。
 お前がいたから小娘が部屋に入る寸前で追い返したからな」

 「わかった。何がいいんだ?」

 「何?」

 「飯だよ」

 「……お前と同じでいい」

 「じゃあ蕎麦になるぜ」

 「構わん」

 「じゃあちょっと待ってろ。一回部屋戻って着替えてから行く」

 「あぁ」


 神田は少し早足での部屋から出た




 「…話してて、楽しかった…大した話もしてないのに…
 記憶、少し思い出してみたくなったな…
 神田は、私の何を知っていて、私は、神田の何を知っているのだろう…」





 自分の心にズカズカと土足で入られる感覚がする…

 けど、それは嫌でもなければ迷惑でも、うっとうしくもない。

 そんなお前の存在が、私を変えようとする…

 私はお前が気になってしかたがない。














 



07/08/12