ザザザザザザザ


 四人は急いでイノセンスのある場所まで走る


 「マテールの亡霊がただの人形だなんて…」


 アレンが呟く。
 そう。亡霊の正体はただの人形…









  







 岩と乾燥の中で劣悪な生活をしていたマテールは、
 『神に見離された地』と呼ばれ、
 その地で絶望に生きていた民達は、それを忘れる為
 踊りを舞い、歌を奏でる快楽人形を造ったのである。

 だが結局、人々は人形に飽き、外の世界へ移住した。
 置いていかれた人形は、それでもなお動き続けた。

 五百年経った現在でも…





 「イノセンスを使って造られたのならありえない話じゃない」


 「なんかひどい話ね。人形がかわいそう。
 …ユウが端折って教えてくれたから、そう思うだけなのかもしれないけど…」

 「いや。お前の言うことは間違っちゃいないだろ」




 ゾクッ

 「「「!!」」」


 四人は何かを感じて、崖の所で止まった。
 そこからは町が広く見渡せる。


 「(何コレ…なんか…すごく冷たい…。他の…ファインダーさんは…?)」

 「………」

 「ちっ… トマの無線が通じなかったんで急いでみたが…殺られたな」

 「…………」

 「おいお前」

 「!」

 「始まる前に言っとく
 お前が敵に殺されそうになっても、任務遂行の邪魔だと判断したら
 俺はお前を見殺しにするぜ!
 戦争に犠牲は当然だからな。変な仲間意識持つなよ」

 「嫌な言い方。………」

 「……;」


 アレンは少しを見て


 「でも、さんには僕と同じこと言えないでしょ」

 「……;;…ちっ…;」

 「いいですよ。むしろ、大切な人なら何があっても守るべきですよ」

 「!……モヤシ…」

 「あくまで僕の紳士的な意見ですけどね」

 「……アレン…くん…



 ドーン!


 「!」


 音がした方向を見ると、アクマが、人形を守っている結界を撃っていた
 人型をしたアクマの下には、ファインダーがいて、
 頭を足で踏まれている……


 「うぐ…」

 「この人間め。装置ごと人形を結界に閉じ込めるなんて考えたね
 こりゃ時間かかりそうだ」

 「イ…イノゼンズは…お前らアクマになんか…渡ざない…っ」


 グッ!


 「ギャアア!」


 ファインダーの頭が潰された……


 「ヒマ潰しにお前の頭で遊んでやる」



 「やめろ!」


 ドン!!!


 アレンがアクマに攻撃した。


 「にこ! 何お前?」

 「!」

 「何よ?」


 ドゴーーーン!!



 「アレン君!!」


 アレンがアクマに蹴り飛ばされ、壁をぶち抜いた…


 「あの馬鹿」

 「ユウ…アレン君が……どうしよう…」

 「考え無しに突っ込んだあいつが悪い」

 「でも……」

 「奴はレベル2に進化したアクマだろう…
 初期レベル時より強くなってるし自我を持ってる。能力も未知数だ」

 「それって…」

 「簡単に言えばすごく強い奴ってことだ。」

 「じゃあアレン君が危ない!」

 「知ったことか。
 ……あそこにいるのがおそらく人形…
 あの結界も4つではそう長くはもたないな…」

 「……;ユウ…どうするの?」

 「人形のところへ行く。しっかりついて来い」

 「え!アレンくんは?」

 「あんな奴に構っていられない!任務はイノセンスの回収だ」

 「ぅ…うん…わかった…」


 「いくぞ六幻! 抜刀!!」


 神田が刀に指を這わせた


 「イノセンス発動!!!」

 「わ!何それ!カッコイイ!!
 ぁ。アレン君の腕も変形したよね?カッコイイな〜」

 「;んなこと言ってる場合か」

 「私もできるの?」

 「あぁ」

 「うし!…イ…イノセンス発動!!」


 のグローブが緑色の光を放った


 「ぉ…ぉおおおおお!スゲーーカッコイー!」

 「行くぞ!」

 「あ、うん!」


 二人は足場から飛び降りながら


 「六幻  災厄招来! 界蟲『一幻』!!」

 「ぅらぁあああ!!」


 ドドドン!!

 アクマを壊した


 「!?」

 「!?あーっ!!?もう二匹いた!」


 アクマが二人に気づいた




 「おい。タリズマンの解除コードは何だ?」

 「うはー!すごい!喧嘩より楽しいよこれ!」

 「き…来てくれたのか………エクソシス…ト」

 「手ごたえがあって気持ちい!!」

 「早く答えろ。お前達の死をムダにしたくないのならな」

 「キャハ!すごく強くなったって感じーー!」

 「………少し黙れ」

 「ぁ…ごめんなさい…;;」


 はやたら楽しかったのか神田の後ろで騒いでいた;;


 「は… ハブ ア ホープ ”希望を……持て…”だ!」


 ガク…


 「ぇ…ユウ…その人……;」

 「……」


 神田はの問いを沈黙で答えた


 「…そ…そんな……。ぁ!私のイノセンス、治療出来るよね。それ使えば…」

 「手遅れだ。言わねーとわかんねーか?」

 「………ぅ…」

 「戦場というのはこういうものだ。さっきまでの浮かれたテンションは何処に行った?」

 「こんなの見て…浮かれてられない…よ…」


 は泣きそうに言った


 「だろうな。でも泣いている場合でもない。人形の所へ行くぞ」


 二人は人形のもとへ下り、神田は結界を解除した。
 そこには少女と老人であろう二人が深く帽子を被って座っている。


 「来い」

 「……」

 「大丈夫。この人怖い顔してるけど、悪い人じゃないから」


 は二人に優しく言った


 「怖い顔って…お前……………(?あれ…気のせいか…今…)」


 一瞬よぎった疑問も詮索しているヒマはないので、人形を連れて行く…






 「う”〜〜〜〜〜〜〜〜」

 「?」


 アクマが人形の方をちらちら見ながらうなる…


 「殺じたい殺じたい殺じたい!とりあえずお前を殺じてからだ!!」


 が、結局アレンを標的とした。
 人形を連れて行く二人を見て、


 「そっちは後で捕まえるからいいもん!」


 アレンがチラッと二人の方を見る。


 「助けないぜ。感情で動いたお前が悪いんだからな。ひとりで何とかしな」

 「いいよ。置いてって。」

 「!…アレン…君?」

 「イノセンスがキミの元にあるなら安心です。
 僕はこのアクマを破壊してから行きます」

 「ィャ……。
 ユウ人形さんを連れて行くんでしょ!アレン君が戦うなら私アレン君と一緒に戦う!」

 「!?お前、何ふざけた事言ってんだ!お前にアレは倒せない!
 あんな自分勝手なやつの手伝いなんてしなくていい!」

 「そりゃ、私だけなら倒せないよ…でも二人なら…」

 「は俺について来い!!汽車で言ってたろ!俺について行くって。」


 怒りの中に、少しだけ、ほんの少しだけ
 心配と、悲しみの念が込められていた気がした…


 「心配しすぎ…。過保護な親みたいよ…ユウ。。」

 「……;」

 「でも確かについて行くって言ったから。ついて行くよ。」


 死なないでね…という念を、悲しみのこもった表情とともにアレンへ向けた

 そしてそれに応えるようにアレンはニコッと笑顔を返した…

 その後神田とは人形を抱えてアクマのいない場所へ避難。

 アレンは戦闘を開始した…。










 



07/05/29