「……別に、大した理由はないんだけどね…」


 が神田のほうを向いて喋りだす














  













 「この任務内で言わなかったのは、きっかけがなかったからもあるんだけど、
 それ依然に言ったらユウ気にするでしょ?何で喋れるのかさ」

 「……あぁ」

 「そしたら任務の妨げになるじゃない。生死がかかってるのに…」

 「……」

 「ユウのためだったんだ。アレン君にはちょっと迷惑かけちゃったかもしれないけど…」


 はちょっと苦笑いしながらアレンを見る


 「…ぁ、いえ。全然大丈夫ですよ」

 「…(俺の…ため…)」


 その言葉が嬉しかったのか、神田は照れ隠しで顔を下げた


 「でも、なぜはじめから日本語だったかというと、原因を作った人がいるの」

 「原因を作った奴?」

 「…だれなんですか?」

 「私がここに来て、英語わかんないって発言をしたのは誰?」

 「………ラビか?」

 「そう。オレンジ髪のラビさん」


 は人差し指を立てて言った


 「日本からここ来るまでの事なんだけど、
 すんごい能天気な顔して自己紹介しつつ私にいろいろ聞いてきたのよ。
 もちろん何喋ってるとか全部わかってたんだけど、
 いきなりエクソシストだから教団来いってつれてこられたわけで、
 その人が何者なのかわからなかったから喋らなかったの。
 おまけにボソボソと日本語でウザイな〜とかうるさいな〜とか言ってたから、
 『あ〜やっぱこっちの言葉わからないんさ…』とか言って勝手に納得して、
 それから何も聞かなくなったんだ〜。
 だから原因は彼にある!」

 「いや…お前にも少しはあるだろ…」

 「は!?見知らぬ人に個人情報なんて明かすわけないじゃん!
 私は偉い子だよ!褒めてくんなきゃぁ!」

 「…;;」

 「そんでさ、教団来たら言おうと思ってたんだけど、そこでハプンング!」

 「…ハプニング…ですか?」

 「そう!それはユウがいたこと!!」


 はビシッと神田を指差す


 「俺!?」

 「うん。本当に久しぶりだったし、甘えたかったんだよ。
 英語わかんないって言ってたら私のこと構ってくれると思ったから…」

 「…そんなこと考えてたのか…」

 「それにね、英語喋るユウが余りにもカッコよすぎて///」


 モジモジと言う


 「は?」


 それに神田が素っ頓狂な声を出した


 「英語で会話なんかして鼻血でちゃやだったから〜///」


 顔を手で覆い隠して言う


 「……?」

 「さん;;」


 「なーーんてね!!それはウソ!まあカッコイイとは思ったけどね」

 「……変なウソつくな」

 「でも甘えたかったのは本当だよ〜」


 ピースして神田に笑顔で言う


 「…っ///」


 神田は咄嗟に顔を伏せた


 「…(な…なんでこんなに…;;アクマとの交戦が終わって気でも緩んだか…)」

 「?」

 「…(神田も、わかりやすいですね…)」


 神田を見て思うアレン


 「どうしたの?ユウ」


 は顔を伏せたままの神田が気になり話しかけた


 「な、なんでもねぇ!そ、それよりこっちの言葉わかるんなら安心した」

 「?」


 神田は最初は焦ったものの最後は真剣な口調で言った


 「…コムイからの伝達だ。俺はこのまま次の任務に行く」

 「…」

 「とモヤシは本部にイノセンスを届けろ」

 「……わかりました」


 「え!?私はやだ!ユウと一緒に行く!!」


 が勢いよく立って言った


 「ダメだ。もうこれは決まった事だ」

 「……やだ…一緒がいい…」


 涙目で言う


 「なんで泣くんだよ…まるで俺が死にに行くみたいじゃねぇか…」

 「別にそんなじゃ……」

 「任務終わったらすぐ戻る。お前、来ていきなり任務で疲れただろ?
 教団帰って休め。だいたいイノセンスろくに使えねぇのに来てもしかたねぇだろ」

 「……それは…そうだけど」

 「ちゃんと使いこなせるようになってから次は任務やれ」

 「………わかったよ…。ユウが帰ってくるまでに使いこなしてやる!!」

 「それは無理だろ」

 「ムカツク〜!ぁ!いいもん!」


 ガシッ


 「なっ!」

 「!…さん……?」


 がアレンに抱きついた


 「アレンくんとイチャイチャして帰って、
 それから一緒に修業付き合ってもらうからー!」

 「な!?イチャ……;;モヤシィ!!から離れろ!!」


 神田が立ち上がって怒鳴った


 「……僕がくっついているわけじゃないので…無理だと…」

 「!!離れろ!今すぐ離れろ!!」


 を指刺し怒鳴ると


 「はぁ〜。ユウ、確かに私は構ってもらうと嬉しいけど、
 そんな私のことばっかり見てたら良い彼女見つからないよ〜
 あ…でも戦ってるのにそんな余裕ないか…あはは」

 「ぇ…!?(………今何て……)」


 予想もつかなかった言葉が出て来た気がした…
 神田がが今言った事を頭でリピートしようとした時


 「アレン君…。さっきから話しには入ってきてくれるけど、
 なんだか元気がないね。どうしたの?どこか痛いの?」

 「ぇ……ぁ、いや。そういうわけじゃ」


 がアレンが元気がないことに気付いた


 「…………。辛いなら人形止めて来いよ。
 あれはもう『ララ』じゃないんだろ」

 「ぇ。アレン君ララさんのこと…」


 イノセンスを戻した後の『ララ』を実際に目で見たのは
 アレンとの二人…。  神田はに大体の話を聞いていた


 「ふたりの約束なんですよ。
 人形を…ララを壊すのはグゾルさんじゃないとダメなんです」

 「そうだね。アレン君」


 は座りなおし、アレンの背中を優しくなでた


 「甘いな。お前らは。
 俺達は『破壊者』だ『救済者』じゃないんだぜ」

 「……」

 「……わかってますよ。でも僕は……!」

 「!?」

 「ぇ…」


 ヒュンと風が吹いたかと思うと、いつの間にか…


 「歌が…止まった…」

 「ララさん…」



―グゾルが死んで3日目の夜
 人形は止まった



 アレンとが人形のところまで来たとき


 『ありがとう。壊れるまで歌わせてくれて』

 「「!?」」

 『これで約束が守れたわ』


 そう言って、ガシャっと倒れた


 「……っ」

 「ララ…さん……だったんだ。ずっと……最期まで…」



 「おい?どうした」



 建物の入り口から聞いてくる神田に、アレンは言う



 「神田…それでも僕は誰かを救える破壊者になりたいです」






 『なれるよ』とは言えない。
 私はまだ、この世界の事をよく知らないから。
 だからただ背中を優しく、優しく慰めるようになでてあげるだけ。

 これからはもっと辛い事もあるかもしれない。
 今回みたいに死にそうになる事も、たくさんあるだろう

 だから私は強くなる。
 強くなって、人を救えるエクソシストになる!
 そしていつか、『なれるよ』って言ってあげれるくらい。




 今回の任務は終了。あとは私とアレン君でイノセンスを教団に持って帰るだけ。
 あ、写真とるの忘れないようにしないとね!コムイさんが泣いちゃう。



 初めての任務、二人の心を救えてよかった。
 これからもたくさんの人を救えますように。


 グゾルさん、ララさん、どうか安らかに………







―土翁と空夜のアリア  完











 



07/08/20