「それにしても、さんが、こっちの言葉がペラペラなんて驚きです」

 「それは私も思っていました」


 手当てがある程度済み、ひと段落ついたころに、ふとアレンとトマが言った

 その間ララはずっとグゾルのために歌を歌っていた…













  












 「ごめんね。騙しちゃったみたいで…」

 「どうして話せないフリをしてたんですか?」


 は少し考えて


 「甘え………かな?」

 「甘え?」

 「久しぶりにユウに会ったから、甘えたかったのかも。
 それに、原因作ったのは、私を教団に連れてきた人だし…。まあ私も悪いんだけど」

 「そうなんですか…。」

 「ユウがまた起きたら、その時はまた日本語を使わせてもらうから」

 「え?何でですか?」

 「まだあのアクマを倒せてなかったらの話だけど、
 もしここでバラしたら、ユウのことだから任務一番なふりして
 どうして喋れるのかとか気になると思うの。今江戸は鎖国してるし…」

 「…そっか」

 「こんな時に説明するのも面倒だから…、バラすなら全部終わってからがいいかな〜って。
 それがやりずらくてうっとうしくなったら日本語やめるけど…。一応ユウのためよ」

 「さんは、神田のことが大好きなんですね」

 「な!?べ…別に…大がつくほど好きじゃないわよ…///」


 は顔を真っ赤にして言った。


 「(わかりやすいな〜)顔、赤いですよ」


 アレンがニコッと言った


 「そういうの、いちいち口に出さないでよ…。
 それより、ララさんからいろいろ話し聞かないの?」


 「そうですね。ララ!すみません。少しお話を聞かせてください」

 「……」


 ララは歌うのをやめた


 「ララさんとグゾルさんのこと、聞かせて」


 は笑顔で聞いた








 「…昔、ひとりの人間の子供がマテールで泣いていたの。

 その子は村の人間達から迫害されて、亡霊が住むと噂されていたこの都市に捨てられた。

 マテールの民が去って五百年…。人間が迷い込むのは別にこれが初めてではなかった。

 確かこの子供で6人目…。五人は私が『歌はいかが?』と聞くと突然襲いかかってきた。

 『化物』そう言って私を叩きのめして…、私は『歌はいかが?』と聞いたのに…

 だから目の前のこの子供も、私を受け入れてくれなかったら殺すつもりだった。五人のように…

 でもこの子供は、笑顔でこう言った。『ぼくのために歌ってくれるの……?歌って亡霊さん…』と」


 「その子供が、グゾルさんだったのね」


 ララはうなずいた。


 「あの日から80年…グゾルはずっと私といてくれた。
 グゾルはね、もうすぐ動かなくなるの…。心臓の音がどんどん小さくなってるもの。

 最後まで一緒にいさせて。グゾルが死んだら私はもうどうだっていい。
 この五百年で人形の私を受け入れてくれたのはグゾルだけだった…。

 最後まで人形として動かさせて!お願い」


 「…うん!」

 「ダメだ」

 「!」

 「!?ユウ…」


 が懸命に願うララの気持ちを考え快く返事をしたが、神田によってかき消された…


 「その老人が死ぬまで待てだと……?この状況でそんな願いは聞いてられない…っ」

 「ユウ…」

 「……」

 「…俺たちはイノセンスを守るためにここに来たんだ!!
 今すぐその人形の心臓を取れ!!」

 「………」

 「ユウ…ひどいよ…」

 「ハッ…ハッ……く……。俺たちは何の為にここに来た!?」


 「…と…取れません。ごめん…僕は…取りたくない…。多分…さんもおな…!?」


 神田は枕にされていたアレンの団服をアレンへ投げ返した


 「そのコートはケガ人の枕にするもんじゃねぇんだよ!
 エクソシストが着るものだ!!!

 だいたい、言葉も通じねーのにのことを出してくんじゃねー。
 盾になると思ったら大間違いだぜ」



 神田は自分の団服を着、人形へと歩み寄る…

 アレンとすれ違いざまに、



 「犠牲があるから救いがあんだよ新人」



 と言いながら。


 「……!」

 「お願い…奪わないで…」


 神田は無言で刀をララへ向けた


 「やめてくれ……」



 「じゃあ僕がなりますよ」

 「!?」

 「アレン君…」

 「僕がこのふたりの『犠牲』になればいいですか?」

 「お前…」


 アレンが二人を守るように刀の前へ立った…


 「ユウ、武器を二人に向けてあげないで…。わかってあげてよ…」

 「!?!」


 も二人を守るかのようにアレンの隣に立った


 「さん…。(言ってることはわからないけど…やっぱりさんも僕と同じ考え…)」

 「……」

 「ふたりはただ自分達の望む最期を迎えたがってるだけなんです。
 それまでこの人形からイノセンスは取りません!
 僕が…アクマを破壊すれば問題はないでしょう!?

 犠牲ばかりで勝つ戦争なんて、虚しいだけですよ!」



 バン!!


 「!アレン君…」

 「…っ」

 「神田殿!!」


 神田がアレンを殴り飛ばし、
 そのひょうしにふらついて座り込んでしまった

 そこにが寄り、


 「ユウ…。怪我してるとこ悪いけど、これくらいじゃ死なないと思うから…」

 「…?」


 パシン!!


 「っ!!?」


 飛ばすほどではないものの、勢いよく引っ叩いた。


 「なにもアレン君を殴ることないでしょ!」

 「…黙れ」


 ギロっとを睨む


 「イヤ」


 神田の睨みに全く動じず返した
 それどころか神田以上に鋭く睨み返した


 「黙れって言ってるだろ!何でお前はこいつの肩入れをする!?」

 「別に、肩入れなんてしてるつもりはない」

 「じゃあ俺の言うことを聞け!」


 「私はあんたの人形じゃねーんだよ!思ったように行動して何が悪い!?」


 ドン!!


 「ぅ…!?」

 「こんな所で喧嘩ふっかけてくんじゃねー。少し黙ってろ」


 神田がの腹を今出せる精一杯の力で殴った


 「っく……あんた強くなったな…。結構クリーンヒットじゃんか……
 (イ…イノセンスで治せたりするのかな…?自分だし…なんとかコントロールして……)」




 「全く…もテメェも…。とんだ甘さだなおい…」

 「……」

 「可哀想なら他人の為に自分を切売りするってか…?
 テメェに大事なものは無いのかよ!」

 「大事なものは…昔失くした…」

 「!…」

 「可哀想とか…そんなキレイな理由あんま持ってないよ。
 自分がただそういうトコ見たくないだけ…。それだけだ。
 僕はちっぽけな人間だから、大きい世界より目の前のものに心が向く……だから、

 切り捨てられません。守れるなら守りたい!」

 「……」


 「(…何この感じ…さっきと同じ……!?)危ない!ララさん!グゾルさん!!」

 「「………!」」




 が叫んだその瞬間、ララとグゾルの後ろから何かが伸びてきた……











 



07/06/04