優しく抱きしめあう二人…

 が少し力を入れた


 「大丈夫か?」

 「……何かが…流れてくる……」


 再び抱きしめる力を強めた














  













 「いろいろ流れてくる……でも、不思議と怖くない」

 「そうか」

 「ぅ!!?」


 突然が苦しそうな声を上げた


 「どうした!?」

 「頭いっぱいに、神田のことが流れる……
 そうとう、想いが強いん、だ……な………」


 ドサッ


 「!?!」


 の力が抜け、そのままベッドに倒れた


 「………」

 「気絶……してるのか…」



 神田はをきちんとベッドに寝かせた。

 そして心配しつつも腹は減っているのでテーブルに置いた蕎麦に手をつけた











 そして一時間後…



 「………かん…だ…」

 「!」


 は目を覚ました


 「お腹すいた…蕎麦、取って」

 「!ぁ…あぁ」


 テーブルに置いていたの蕎麦。
 時間が経ってるので少しパリパリになっていた。


 「大丈夫か?」

 「あぁ。膝に置くから大丈夫」

 「ぃや…そうじゃなくて…」


 は神田の顔を見た


 「…体なら大丈夫だ。心配させてすまない」

 「!?…?」


 気絶する前とどこか雰囲気が違うが、神田は少し気になった


 「……神田…」


 蕎麦つゆに映る自分の顔を見ながら喋る


 「…何だ?」


 「本当にすまない…私が不甲斐ないばかりに…」

 「……?」

 「あの時アクマの話しなど聞いてやらなければよかったんだ…
 まさかこんな能力だとは思わなかったから…
 絶対勝てると自信を持ちすぎたから…」

 「!?……お前…記憶が…」

 「あぁ。ちゃんと、戻った。」

 「よかった…」


 神田は安心して表情を緩めた。
 どこかふんわりとした笑顔のようにも見える


 「アレンやリナリー、コムイにも言っておいてくれ…すまないって…」

 「…、バカか。んなこと自分で言え」

 「フ…そう言うと思った」


 は笑顔で蕎麦をすする


 「………」


 が、突然表情が曇った…


 「ど…どうした…?」

 「パリパリで不味い…」

 「;;しかたねぇだろ…」

 「…我慢する」



 はズズズっと蕎麦をいっきに食べきった

 そして膝に乗せてたお盆を神田に返す


 「神田、ありがとう」

 「……なんだよ急に。別に礼言われる事なんか…」

 「諦めはしてたけど、最後まで私のこと、嫌いにはならなかった」

 「あたりまえだろ!」

 「でも、やっぱり夢と同じ事がおきたから…。
 もしかしたら…神田死んでたかもしれないんだ
 嫌われても当然な事を、私はした」

 「あれは俺がわざとああしたんだ。
 あんなヘボい攻撃、よけようと思えば普通によけれる」

 「!?」

 「お前の夢を信じてみた。
 夢で見るくらいなんだから何かのきっかけになると思ってな」

 「バカかお前!それで死んだら…」

 「あぁ。バカだから死んでもいいと思った」

 「……ふざけるな…そんなことするくらいなら…もっとマシな方法考えろ…」


 の目からボロボロ涙が零れた


 「!おい…泣く事ないだろ…生きてるんだし……珍しいな…」

 「私だってわからん!なんか勝手に出てくるんだ!!」

 「ったく…落ち着け」


 神田が片手でそっとを自分の方に引き寄せた


 「……ヒクッ…ぅ……」

 「お前、もっと子供になってねぇか?」

 「うるさい…黙れぇ………ぅっ…ヒク…」


 「(まったく世話の焼ける奴だ…まぁそうでないとらしくないが…)」











++++




―司令室にて


 「ちゃん!戻ったのかい!!?」

 「あぁ。…本当にすまない…」

 「いいのよ!戻ってよかったわ!!」

 「それにしてもさすが神田くんだ!ちゃんのことはやっぱり神田くんだね!」

 「…さわぐな…うるさい」


 ジリリリリッ

 突然コムイのもとに電話がかかって来た


 「はいは〜い」


 『コムイさん!!!さんが戻ったって本当ですかぁ!!!!』


 「ぅわ〜〜!!?そんな大声出さなくても聞こえてるからぁ
 というかなんで知ってるんだい?」

 「私がさっき連絡したのよ。
 でもそのときアクマと交戦中だったみたいだから、
 ファインダーに伝言をね」

 「そうだったんだ」


 『あの!さんは!?』


 「ちゃんなら…!?」

 「私ならここにいる」


 がいきなりコムイから受話器を取り上げて喋った


 『さん!本当によかったです!!』

 「あぁ。すまなかったな。いろいろ迷惑かけて」

 『いえ!そんなこといいんです!!すぐには戻って来れませんが、
 僕が教団に戻ったら、また笑顔みせてくださいね!』

 「あぁ」

 「いつまで喋ってんだ!テメェは任務に集中しやがれ!」


 神田が会話に割って入った…


 『ぅわ!?神田いたんですか…すみません;それでは。』


 プチッ…プー…プー…

 アレンからの電話は嵐のように来て、去っていった…



 「とりあえず問題は解決だ。戻るぞ。疲れてんだろ?」

 「ん?あぁ。疲れたな…」


 「そっか、じゃあゆっくり休んでね」

 「元気になったらまた任務一緒に行きましょうね!

 「あぁ」


 は笑顔で返事をして神田と一緒に司令室を後にした







 何があっても俺が守る。

 たとえ俺のことを忘れたとしても、が生きている限り、守り続ける。

 に自分の気持ちを伝えたあの時から、俺はそう思って生きてきた。

 これからもっと辛く困難な障害が待ってるかもしれねぇ。

 でも俺は、をずっと好きでいる。死ぬまでずっとだ。






 神田は何があっても私を好きでいてくれる。

 それが、今私が生きていることの支えになっている…

 きっとこれからも、私の傍にいて守ってくれるのだろう。

 時には厳しく、時には優しく抱きしめてくれる。

 私の感情コントロールをしてくれる存在。

 私の心の領域に、いとも簡単に踏み込んでくる存在。

 きっと死ぬまで、そんな存在でいてくれるだろう







 だって、《神田は私・は俺》の、真の心の拠り所なのだから









―――完―



 



07/08/13