「迷子迷子迷子〜〜〜!!!助けてくださいぃ〜!コムイさーんっ!!」

 『ちゃん、そんなに大声出さなくても聞こえるから…。耳が痛いよ…』


 受話器を耳に当てて電話をしている少女の甲高い声がとある店の中から聞こえた…













  













 「でも!迷子ですよ迷子〜!帰れないんですよ〜〜!」

 『ゴーレム使って電話出来たなら、ゴーレム使って帰ればいいのに』

 「へ?」

 『ゴーレムは道案内もしてくれるよ。説明したじゃない』

 「まじですかーー!!」


 が大声を出すたびに店の客達がの方を睨む…
 が、は全く気づいていない


 『…だから大声出さなくても………………』


 「どうしたんですか?」


 突然黙り込んだコムイが気になりは尋ねた


 『いや、折角だからそのまま任務行ってもらおうと思ってね』

 「任務!?無理ですよ!私迷子ですよ!迷子!」

 『ハハハ。そんなに何回も迷子強調しなくていいから。心配しなくても一人でじゃないよ。
 リナリーをそっちに向かわせるから二人でね。合流しやすいように、
 大きな建物だとか目立つような物の近くで待ってて。そう遠くないからすぐ合流できると思うよ』

 「わかりましたー!待ってます。あ、いっぱい買い物しちゃったんですけど…」

 『その辺の地区のファインダーに預けたら大丈夫だよ』

 「じゃあそうしまーす!」


 ガチャ
 静かに受話器を置く

 「とりあえずよかったー。あんた道案内もしてくれるんだね。
 …そういえばマテールの任務の時ユウが案内にゴーレム使ってたよねー」


 今朝出来たばかりのMyゴーレムを突きながら言う
 そしての団服は前とは少し違い、下はスカートではなく半パンになっている。
 スカートは嫌だとコムイの耳元で何度も叫び散らした結果である。


 「さて、目立つ建物がある所に行かないとね。さ、ポケットに入ってねゴーレム」


 ゴーレムはスポッとズボンのポケットへ入った


 「…ん?」


 電話を借りてた店を出たところに、頭にカボチャのような物が付いた傘を持った
 青紫色の髪の少女が、こっちをジッと見ていた。


 「…?」


 キョロキョロと辺りを見回し自分以外に人がいるかを確認したが自分しかいない…


 「…;(私を…見てるのかな…?何か顔に変な物でもついてる?
 いや、この大量の荷物に驚いてるのかな…?)」


 「迷子なんだぁ」

 「へ?」

 「さっき大きな声が聞こえたからさぁ。あんな大声出して恥ずかしくないのぉ?」

 「ぇ…あ、アハハハハ;」

 「お迎え来てくれるのぉ?」

 「うん。目立つ建物のある所にいてって言われた」

 「そぉ。じゃぁボク暇だし付き合ってあげようか?一人じゃ寂しいでしょぉ?」

 「え…いいの?家族とか友達とか、一緒じゃないの?」

 「今日は一人だよぉ」

 「そうなんだ。じゃあお願いしようかな」




 +++



 「うわ〜。遠くから見てもすごく大きかったけど近くから見ると半端ないねー。」

 「この辺じゃここが一番目立つ建物だよ」


 と少女は今いる街で一番大きな時計台の前にいる。
 目を見開き上を見上げるに少女はニコッと笑った


 「道案内ありがとう。おまけに荷物まで持ってもらっちゃって」

 「いいよいいよぉ〜〜」

 「その辺に置いちゃっていいよ。重たいでしょ?」

 「うん。そうするよぉ」

 「そういえば名前聞いてなかったね。私は。あなたは?」

 「ロード・キャメロットだよ」

 「ロードちゃんか。可愛い名前だね」

 「ありがとぉ」

 「今日は一人って言ってたけど、お家はこの近くなの?」

 「近くじゃないよ〜。ちょっと遠出の散歩って感じかな〜」

 「へ〜。大人だね。私なんかこの年で道に迷って騒いで…。
 こっちに来てまだそんな経ってないっていうのもあるんだろうけど…」

 「最近来たの?引越しぃ?」

 「うん…そんな感じかな〜」

 「親の都合、とかぁ?」

 「うんぅ。親はいないんだー。もともと孤児だし。こっちには就職しに来たって感じかな」

 「へ〜。…何か、ごめん」


 少し俯いて言うロード


 「いいよ別に、親の顔なんて覚えてないわけだし」

 「…、それ、就職先の制服?」


 ロードはの着ているものを指差し言った


 「え?あぁ、そうだね。制服みたいなものね」

 「変わってんねぇ」

 「だよね〜。黒と白で地味だし」


 クスクスと笑う二人


 「なんかさ、ロードちゃん」  空を見ながら言う


 「なぁに?」

 「うん…。なんかね、初めて会った気がしないなーって。こう、なんか…
 昔から知ってたような…懐かしいような、よくわからないけど、そんな感じ」

 「…………ボクも…。何かそんな感じしてたよ」

 「変だよね。今日初めて会ったはずなのに」

 「そう、だねぇ…」


 空を見たままのを見るロード


 「…(確かに感じる。懐かしい感覚…家族といるような感覚…こいつはエクソシストだってのに、
 殺意の欠片もわかないなんて、どうなってるんだよ……こいつ本当にエクソシストか?
 でもイノセンスはちゃんと持ってるみたいだし………!?まさか…!……もしそうだとしたら…、
 こりゃ、面白いことになるかもしれないよぉ)」

 「ロードちゃん?」

 「え!何ぃ?」

 「いや、ずっと私の事見てるから…。私に何かついてる?」

 「あ、違うよぉ。考え事してただけ」

 「そっか」



 「ーーー!!」

 「!?リナリー!」


 遠くからリナリーが安堵の表情を浮かべ走ってきた


 「もぅ!大丈夫だった?心配したんだから」

 「ごめんごめん。大丈夫だったよ。この子が……ってあれ?」

 「どうしたの?」

 「いや、私に付き合ってくれた女の子がいて…さっきまでココにいたんだけど…。おかしいな…。」


 ロードはいつの間にかその場から消えていた…


 「帰ったんじゃない?」

 「………」


 「それにしてもさん、すごい量の買い物ですね…」

 「いやー買いたい物たくさんあって…ってアレン君もいたの?」

 「ぇ…あ、はい(今いることに気づいたんですか…ぅ〜;)」

 「アレン君も任務一緒よ」
 
 「そうなんだ。コムイさんはリナリー一人って言ってたけど…ま、いっか。よろしくね!」

 「(ま、いっかって…なんか複雑だなぁ…)はい。よろしくお願いします」




 そのころ、消えたロードは屋根の上にいた


 「ロードたま〜。勝手な行動はやめてくださいレロ〜」


 ロードの持ってたカボチャの傘が突然喋りだした。なんとも奇妙な光景である…


 「いぃじゃん別に」

 「よくないレロ!エクソシストなんかとお喋りだなんて、伯爵たまに怒られるレロ〜」


 「おーい!やっと見つけた」

 「あ、ティッキー!」


 屋根の上をピョンピョン跳ねながらビン底メガネをかけた男がロードのもとへ駆け寄った

 「こんなとこで何やってんだ?ロード」

 「ちょっとね。面白いもの見つけたんだぁ」

 「面白いもん?」

 「あの子」


 ロードが下にいるを指差した


 「あの子って…エクソシストじゃねぇの…」

 「ただのエクソシストじゃないかもなんだよねぇ」

 「それはどういう意味だ?」

 「さっき暇つぶしにあの子といたんだけどねぇ、殺気が全然わかなくて〜。
 それどころか家族といる感覚だったんだよぉ」

 「何だそれ。お前熱でもあんじゃね?」

 「熱なんてないよぉ!だからねぇ…」


 ロードがティキの耳元に顔を寄せる


 「    」

 「っ…!?」

 「たぶんね」

 「ぃや待て。それはねぇだろ」

 「あるよぉ。ボクはそう感じた」

 「んなの……本でしか見た事ねぇよ…本当にいんのか…?」

 「ボクは千年公から直接そんな話聞いたことあるんだぁ」

 「………」


 ティキはを驚きの表情で見つめていた












 



08/03/18