私は回収したイノセンスを届けに一度教団に戻った。
 ついでに一週間ほど休みをもらったので貴重な休みをゆっくり過ごし、
 今日また一人の元帥として教団を出るところだった…


 「…!」

 「もう行くんですか…元帥」

 「ん…そうだが…?」


 が、髪を高々と結い上げた青年、神田が私の行く手を阻むように通路に立っていた…









  








 「あの…元帥…」

 「まだ教団内だからそんな呼び方でなくてもいいぞ。その言葉の響きはあまり好きではない」


 私は“元帥”という響きがあまり好きではない…
 その言葉を聞くたびに責任という重みを感じてしまうから…


 「………元帥…」


 ま、元帥である以上それに耐え乗り越えないといけないのだが…


 「…。で、何だ?言いたい事があるならハッキリ言え」

 「…あの、教団を出て行かれる前に昨日の返事をもらっておきたくて…」

 「……昨日…。何かあったか?」

 「は…!?あの、覚えていらっしゃらないんですか?」


 焦った表情をみせる神田

 昨日…昨日……

 あ……そういえば…



 +++



 夜、突然部屋に神田が来たと思ったら


 『元帥…。俺、前から…貴女のこと尊敬してました…。
 けど今は…貴女のことが、す…好きです!
 貴女が帰って来て、久し振りに、お会いした時に…気付きました…』

 『………』

 『えっと…その』

 『………』

 『し…失礼しました!』

 『…?』


 言う事だけ言って勢いよくドアを閉めてどこかへ行った



 +++



 「…あー、あれか」

 「……やっぱりいいです…忘れてしまうほどの事だったなら返事を聞くまでもないでしょうし」


 俯きなんだか元気がなさそうだ…
 しかし…あれだけの情報しか与えず返事を求めるとは…馬鹿か…
 ん〜返事…返事………そうだな…


 「キモい」

 「え?」


 私からの意外な言葉に驚いたか神田は変な声と顔でこちらを見た


 「返事だ」

 「……」

 「というか感想…だな…」

 「…(キモいって…どういう意味だ…?嫌いとかじゃなくてキモいって…
 でも絶対、好きとかいう意味でもなくて……嫌いってことか…;;)」



 私は神田がしたように、言う事だけ行ってその場を去ろうと神田の横を通り過ぎようとしたが…
 神田があまりにも黒い重たいオーラをまとっていたため素通りすることができなかった


 「はぁ…。キモいというのはお前が普段通りでないからだ。
 お前も若者だから告白する勢いがあるのは大いに結構だ。
 けどあそこまで顔赤くしてモジモジされると気持ち悪い印象しか残らん…。
 それと…、そこまで丁寧に喋る奴じゃないだろ?お前は」

 「変な印象残して申し訳ありませんでした…;……しかし言葉遣いは…、元帥ですから、貴女は」

 「ティエドールの時はもうちょいくだけてるだろ?」

 「…まぁ、どの元帥よりも長くいますから」

 「ふーん。で、私にどういう返事を求めていた?」

 「どういう…って……」

 「私も好きだ。とかを期待してたのか?」

 「え…!ぁ…その…」


 わかりやすいやつだな。こいつは。


 「期待に応えられなくて悪かったな」

 「ぃ…いえ…とんでもない…謝るのはオレの方ですから。変なこと言ってしまって…」

 「……お前は私にどうしてほしいんだ?」

 「え?」

 「お前は私に好きだとしか言わなかった。
 付き合ってくれとかそういうことは一言も言ってない。お前はどうしてほしい?」

 「そんな。付き合うとか…元帥とオレでは釣り合いませんから。ただ、気持ちを…伝えたかっただけで…」
 

 俯いて元気なさそうに…。嘘もヘタだな。


 「本当か?」

 「……か、叶うなら、傍にいたいと…いさせてもらいたいと…」

 「ふーん…。」

 「……すみません。自分勝手なこと」


 何か、こいつ可愛いな…。年下で可愛いときた。
 まぁ、面白そうだから使ってみようか。ティエドールなら何も言ってはこないだろ。


 「傍にいたいのなら置いてやろう」

 「!?」

 「私の手伝いをしろ。助手みたいなものだ」

 「じょ…冗談が過ぎますよ…元帥」

 「冗談ではない」

 「そんな、気を使っていただかなくていいです。嫌いな者と一緒に任務なんて辛いだけですよ」

 「誰が嫌いだと言った?それに何故そんな弱気なんだ?」

 「…?」

 「キモいとは言ったが嫌いとは言っていない。
 第一私は嫌いな者とでも共にいようという優しさなど持ち合わせてはいない。」

 「……」

 「私に着いて来い。コムイに頼んでやる。私の一存で決めていいことではないからな」

 「っ…あ、ありがとうございます!」


 こいつはカッコいいキャラではなく可愛いキャラなのか?
 ぱぁーっと笑顔なんて見せやがって、その辺の女共が見たら瞬殺だぞ
 そんなに好かれているのか…私は。でもま、けじめは付けてもらわねば困る


 「ただし」

 「!」

 「師匠であるティエドールの身に何かあったり、召集ががかかったりしたらかならずそっちを優先しろよ」

 「はい」

 「…私がお前のことを恋愛対象で見ることはこの先きっとないだろう。それでもいいのか?」

 「…はい!可能性がゼロでないのなら努力するだけです」


 やっぱり面白いやつだな。こいつはもしかしたら私を変えるかも知れない


 「フッ。気に入った。本日より神田ユウは、元帥であるこの私、の正式な助手として認めよう!
 コムイは脅せばなんとかなるだろう」


 神田に笑顔を向けた。久しぶりだなぁ…自然に笑顔が出たの


 「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

 「私は厳しいぞ〜」

 「もちろん知ってます。教団で知らない者はいません」

 「ハッハッハ!じゃあ行くか」
 
 「はい!」




 さぁ。お前はこれから私をどう変えていってくれるのかな?








〜〜〜コメント〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

鈴・紗欄様への捧げ物神田夢。
まず謝罪を…申し訳ありません!!!
リクエストをもらった時期から丁度忙しくなりだして、
作品自体はほぼそのころに形は出来てたんですがUP出来ず…
三ヶ月も待たせてしまいました…本当にすみません;

今回は神田夢ということで書かせていただきましたが、
全く神田っぽくないのが出来てしまいました…
なんて言うか、弱い可愛らしい神田もあってもよいのではないかと
ふと思ったのでこれが出来上がってしまったという…。
アレン夢ですと言っても出せそうな感じですね;;
すみません;こんな神田で…そして待たせてしまって…

煮るなり焼くなりなんなりとしちゃってくださいませ。


08/03/19